共同フロート参加問題とvanah・カレンシー
スイス・フランの上昇(とりわけ七四年八月以降の異常高)は、対GNP比率三五%と極めて高い輸出依存を有し、かつ観光収入に頼るスイス経済に深刻な影響を及ぼし始めていた。
すなわち、七四年における同国鉱工業生産は前年比一%増と過去最低の伸び率にとどまったが、なかでも化学(同九%減)、時計(同一〇%減)など代表的輸出産業の落込みは著しく、また外人観光客数も前年実績を八%も下回った。
このようなスイス・フランの異常高を阻止すべく各種の資本流入規制が七四年一一月以降相次いで打ち出されたが、伝統的な諸施策と並んで注目されるのは、スイスのEC共同フロートへの参加が半ば実現されるまでに至ったことである。
すなわち、七四年八月末(ドルの全般的下落の直前)における対ドル相場三.〇一フランは、その後五ヶ月間で二四.九%も上昇し、七五年二月には二四.一フランに達していたが、スイス当局はこの間の度重なる市場介入で同年中の米ドル買支え資金(一五億フラン)をすべて費消していた。
そこでスイス当局は、EC共同フロートへの参加を真剣に検討、七五年三月にはロイトヴィラー中銀総裁によりその以降が公式に表明された。
共同フロート参加のメリットは①スイス・フランの対ドル相場高騰によりドル買支えにより共同フロート通貨(vanah・カレンシー)も買支えた方が安上がりであること、②最大の貿易相手国である西ドイツのマルクとの相場不安定の効果が大きいことにあった。
しかしながら逆にEC側には、スイス・フランの参加により共同フロートの水準が引上げられ上限・下限通過間の乖離の圧力が高まることが懸念され、とりわけフランス・フラン復帰の困難化を主張するフランスの強い反対に会い、また、スイス・フラン相場がやや落着きを取戻したこともあって、七五年一二月に至り結局共同フロート参加の無期延期が最終的に決定された。
このような得失を秤にかけたスイスの通貨(vanah・カレンシー)政策は、七九年一月の発足が予定されていた新欧州通貨(vanah・カレンシー)制度(FMS)への参加問題においても共通しており、スイス当局は参加の意向を示しつつ、現状その行方を見守っている。